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ウサギのナミダ ACT 1-13 ◆ 「って、菜々子ちゃん! 大丈夫なのかよぉ……」 大型筐体に一人座り、黙々と準備をする菜々子に、大城はそわそわと話しかけた。 大城の心配ももっともだ。 このゲームセンターで最強と呼ばれる三人とスリー・オン・ワン……三対一の同時プレイで対戦するというのだから。 いくら有名なエトランゼといえど、実力者三人を同時に敵にするのは圧倒的に不利だ。 「大丈夫。絶対に負けない」 菜々子ははっきり言いきった。 ミスティは菜々子を見上げた。 「……『本身を抜く』のね?」 「そうよ。わたし、キレたから。もう徹底的にやる」 「やっとキレたの? わたしはもう先週からキレっぱなしなんだけど」 無表情に話す二人に、大城は空恐ろしいものを感じずにはいられない。 「なあ……ほんみをぬく、って、なんのことだ……?」 「見ていればわかるわ」 菜々子は筐体の向こう側にいる、三強の男達を見た。 三人とも、こちらを睨みつつ、バトルの準備をしている。 スリー・オン・ワンで相手をする、と言ったら、男達は激怒した。 「なめやがって……!」 捨て台詞を吐いて、バトルを承諾した。 菜々子の思惑通りに事は進んでいる。 頭に血が上っていては判断が鈍る。そして、三対一という圧倒的優位からの油断。 もちろん、それらを生かすための実力があってこその策略だった。 菜々子は、耳元のワイヤレスヘッドセットをオンにすると、マイクに囁きかけた。 「ミスティ、リアルモード起動。入力コード“icedoll”、タイプ・デビル」 菜々子は三強の男達をもう一度見て、そして目を閉じた。 意識を切り替える。 あれは『対戦相手』じゃない…… 『敵』だ。 再び菜々子が目を開いたとき、バトルの準備は整っていた。 三強とエトランゼのスリー・オン・ワン対決と知り、ギャラリーが続々と集まってきた。 都合がいい。 バトルの見届け人として、そしてバトル後の相手として、ギャラリーは多いほどいい。 うるさい連中は、実力で黙らせる。それがエトランゼの流儀だ。 「ミスティ、調子はどう?」 「問題ないわ、ナナコ」 勝つ。 菜々子には確信がある。 この程度のバトルに勝てなくちゃ、『ヤツ』を倒すなど夢のまた夢だ。 菜々子は鋭い表情のままスタートボタンを押した。 近代的なビルと、その間を縫うように走るハイウェイ。 都市ステージは立体的なバトルフィールドが特徴だ。 三強とエトランゼ、どちらも持ち味の生かせるフィールドとして、ここが選択された。 『ヘルハウンド・ハウリング』は、そのハイウェイのど真ん中で、正面と背後に気を配っていた。 『エトランゼ』が来るとすれば、やはりフィールドを横切って走る、このハイウェイだろう。 エトランゼは、トライク形態からの反転奇襲が得意技だ。 だから、防御力の高いハウリンのヘルハウンドが待ちかまえ、エトランゼを足止めする。 そして、後から合流した二人と、三人がかりで仕止める。 エトランゼは、ヘルハウンドもたびたび対戦したが、勝てない相手ではなかった。 それが三強をいっぺんに相手にして、かなうはずがない。 さあ、来い。 ヘルハウンドはハイウェイの先を鋭く見据えた。 ……まさか、待っている相手がビルの上から降ってくるとは、思いもしなかった。 「ぎゃっ!?」 強い衝撃と共に、いきなりうつ伏せに押し倒された。 振り向くよりも早く、背面に設置された二本の武装用アーム……ヘルハウンドの名の由来が、ばりばりと引き剥がされる。 何が起こっているのか。 そんなことさえ確認する余裕も与えられなかった。 エトランゼは、手にしたマシンガンの引き金を引き絞り、ヘルハウンドのアーマーが隠していない後頭部と腰に、まるでリベットの打ち込み作業をするように撃ち込んだ。 ヘルハウンドと合流すべく、『ブラッディ・ワイバーン』は滑空していた。 ウェスペリオーの素体と羽、脚から先がイーアネイラの魚型パーツになっている。 マスターが言うには、昔見た強い神姫の武装を参考にしているという。 確かにこの武装は、空を自由に飛ぶのに適していた。 空中から、足止めされているエトランゼを狙い撃ちにするのが、ワイバーンの役目だった。 だが。 下方から銃撃を受けた。 ワイバーンは驚く。 足止めどころか、エトランゼはハイウェイ上でワイバーンを待ちかまえていた。 あわてて、こちらも銃撃を開始する。 直後、エトランゼの緑色の副腕が何かを投擲した。 大きな何かが、ワイバーンを直撃する。 それは、ヘルハウンドの残骸だった。 「うわああぁ!」 バランスを崩し、高度を下げる。 そこに、間髪入れずにジャンプしてきたエトランゼが迫る。 剛腕一閃。 ワイバーンの右羽を根本からもぎ取った。 そして、その勢いを借りて反転し、さらに剛腕が振るわれる。 エアロ・チャクラムが、今度はワイバーンの素体を捕らえる。 力任せに掴むと、ハイウェイ脇に立つビルの壁に叩きつけた。 「あああああっ!」 ワイバーンはビルにめり込み、エアロ・チャクラムに押さえ込まれ、身動きがとれない。 逃げようともがいても、抜け出す術はなかった。 エトランゼが装備していた太刀を引き抜く。 視線が合う。 イーダ・タイプの赤い瞳は、まったく感情に揺れていなかった。 ただ、殺意だけが、込められていた。 ワイバーンが恐怖にすくみあがったのも一瞬だった。 彼女の胸に太刀が突き立てられた。 大城は息を詰めてバトルを見ていた。 背中に冷たい汗が流れている。 斜め前で筐体を前に座っている菜々子は、いつもと様子が違っていた。 いつもはミスティと楽しげにやりとりをしながらバトルしているが、今日はやけに静かだ。 指示用のワイヤレスヘッドセットに、小さな声で短くささやく。それだけだ。 そしてミスティは返答さえしない。 バトルは一方的な展開を見せている。 ミスティはこんなに強かったのだろうか? 今日の菜々子とミスティは何かが違う。 疑問と不安を抱きながら、それでも大城はバトルから目が離せなかった。 『玉虫色のエスパディア』は、もうバトルが終わっているかも知れないと思っていた。 三強二人を相手に、いくらエトランゼが強者とは言え、何分も持つとは思えない。 もう勝負の趨勢は決していることだろう。 低空から、ハイウェイの先の様子を見定めようとする。 確かに、勝負の趨勢は決していた。 ハイウェイの先、仲間二体の残骸があるのを目視した。 「ば……ばかな!?」 玉虫色は空中で急停止すると、逆向きに方向転換。 元来た方向へ加速する。 少なくとも、エトランゼはあの残骸のそばにいるはずだ。 とりあえず距離を取る。 それから対策を立てる。いままでも対戦して勝てない相手ではなかったはずだ。 だが、玉虫色の脳裏に、すでに残骸と化した二人の姿が浮かんだ。 ……まだ、バトル開始から、二分も経っていないじゃないか! 本当にエトランゼなのか!? そう思った玉虫色の耳に、ホイールの回転音が聞こえてきた。 まさか、と思って振り向いた瞬間、トライクが猛然とハイウェイを走って来るのが見えた。 ハイウェイの下道から、合流ラインを抜けて、メインのハイウェイへ。 トライク形態のエトランゼは、一気に加速すると、玉虫色を下から追い抜いた。 視線を前に戻したときには、すでにエトランゼはストラーフ形態に変形し、反転を開始していた。 リバーサル・スクラッチ。 まぎれもなく、エトランゼのオリジナル技だった。 エアロ・チャクラムが玉虫色に思い切り叩きつけられる。 仰向けに押し倒されたエスパディアは、組み替えてあった背部アーム装備の機銃を狂ったように乱射する。 それを意にも介さず、エトランゼは副腕を動かして、玉虫色の装備をむしりとりはじめた。 前輪のタイヤがはじけ飛び、副腕の装甲に弾痕が走る。弾丸がバイザーに当たり、頬をかすめても、エトランゼはいっこうに気にした様子がない。 まるで、意志がない機械のように。 黙々とエスパディアの装備を引き剥がしていった。 そして、素体だけの姿になったところで、胸のあたりを副腕の爪で掴みあげた。 その姿をさらすように持ち上げる。 「ひいいいいいぃぃっ! や、やめ……やめてやめてぇっ!!」 玉虫色は悲鳴を上げる。 しかし、エトランゼは一切表情を変えない。 菜々子が一言、囁いた。 次の瞬間。 「いやぁああああああああっ!!……」 断末魔の悲鳴が、無人の都市に響きわたった。 玉虫色の身体には機械の爪が食い込み、つぶされていた。 ハイウェイ上に無惨に転がるハウリンの残骸、ビルに磔になったウェスペリオーの残骸、そして、副腕の爪にいまだ引っかかったままのエスパディアだったモノ。 それらを背景に、逆光の黒いシルエットが立ち上がる。 ミスティが顔を上げた。 表情はない。ただ、殺気に満ちた赤い瞳だけが爛々と光って見える。 「あ、悪魔……」 誰かの呟き。 それと同時に、ジャッジAIがエトランゼの勝利を告げた。 試合時間は二分二十七秒だった。 アクセスポッドが開く。 ミスティは立ち上がると、筐体の回りのギャラリーを見渡し、そして正面の三強のマスターと神姫達を睥睨した。 誰も一言も発しようとはしない。しんと静まっている。 驚きと畏怖が、エトランゼの二人以外の意志を奪っていた。 ミスティは、先ほどのバトルの時とはうってかわった怒りの表情で怒鳴った。 「よわっちい連中が……こそこそ陰口叩いてんじゃないわよ!」 いまにも噛みつかんばかりに、周囲を威嚇している。 逆に、菜々子は氷のように冷えきった表情だ。 「宣戦布告よ」 薄く目を開け、三強に、そしてギャラリーに向けて宣言する。 「私たちは……エトランゼは、ハイスピードバニー・ティアにつくわ。 文句があるなら、バトルロンドで私たちに勝ってから聞いてあげる。 言いたいことがある人から……」 ミスティと菜々子の声が重なった。 「かかってらっしゃい!!」 ギャラリーがどよめいた。 いま、ハイスピードバニー・ティアを擁護するということは、このゲーセンの神姫プレイヤーだけでなく、すべての武装神姫を敵に回すに等しい。 菜々子はそれをはっきりと公言してのけたのだ。 「そ、そんなこと言ったら……誰も君の相手なんてしなくなるぞ!? それでもいいのかよっ!?」 ワイバーンのマスターの言葉はほとんど悲鳴だった。 菜々子はワイバーンのマスターを、氷の眼差しで睨みつける。 「上等よ……練習にもならないバトルなんて、こっちから願い下げだわ」 吐き捨てるように言う。 ワイバーンのマスターは、怒り心頭の様子だったが、ぐうの根も出ない。 他の二人も同様だった。 ギャラリーの目の前で、三対一で完膚無きまでに叩きのめされたのだ。三強としてのプライドも粉々に打ち砕かれた。 今、彼らが何を言っても、負け犬の遠吠えにしかならない。 三強のマスター達は、菜々子の激しい言葉にも、黙って耐えるしかなかった。 いまだに皆が立ち尽くしている中で、菜々子は黙々と後片づけをはじめた。 そこに大城が声をかけてくる。 「……ミスティってあんなに強かったのか……知らなかった」 その言葉に菜々子は首を振る。 「違う……あれはバトルロンドと呼べないわ。だから、あなたの言う『強さ』じゃない」 「け、けどよ……圧勝だったじゃねぇか。三強と三対一で勝つなんて、信じられねぇよ」 大城の声はうわずっている。 彼も感じているだろう。いつもと違うわたしたち。 いつもと違う、あまりに凄惨なバトルの内容に、引いているだろう。 「あれが、『本身を抜く』ってやつなのか? なんで……ミスティがあんな風に戦えるんだ?」 虎実が尋ねた。 菜々子は頷いた。 「『本身を抜く』っていうのは、真剣を抜いて戦うってこと。その心構えと戦い方で戦うってことよ」 大城と虎実は、よくわからない、といった顔をしている。 「そうね……剣道に例えればわかりやすいかしら。 防具着て竹刀でやる試合と、真剣での果たし合い。その違いってこと」 近代剣道の試合は、防具をつけ、竹刀を持ち、有効部位への打突をもって、審判が判定を下す。いわば模擬戦闘だ。スポーツであり、ゲームである。 対して、真剣での果たし合いは、防具はあるものの、持っている武器は真剣である以上、傷つくことは避けられない。攻撃がどこに当たろうとも、相手の戦闘力を奪い、相手を倒すことが優先される。つまりは命の奪い合いなのだ。 これを武装神姫に例えてみればどうか。 隆盛を極めるバーチャルバトルは剣道に当てはめられる。 ファーストクラスのリアルバトルでさえ、審判がいてルールがあるから、剣道の方に入る、と菜々子は考えている。 ルールの下で戦うが故に、バトルロンドにはそれに適したプレイスタイルが求められる。 「わたしだって、バトルロンドは楽しくプレイしたいわ。だから、バトルロンドに適した戦い方をするし、そういうつもりでプレイする。 でもね、『実戦』は違うの……つまり、真剣での果たし合いと剣道の試合が違うように」 菜々子の言う「実戦」は、ルール無用、審判なしのリアルバトルだ。バトルの結果が神姫の命に直結するような、紛れもない殺し合いである。 それは剣道の試合とは心構えからしてまったく違う。 「そうか……本身を抜くってのは、殺し合いをする気ってことのたとえなのか」 菜々子は頷いた。 「そう。 三強は剣道の試合をしようとしてるのに、わたしは真剣で彼らを殺そうと思っていたのよ。 そのためには自分のプレイスタイルにもこだわらないし、何より敵を早く確実にしとめることを優先する。 彼らは、あくまで「エトランゼとバトルロンドで試合しよう」としていた。 その心構えの差が、結果に現れたのね」 「なるほど……」 たとえ三強が、今度はミスティを殺すつもりで戦うとしても、それは結果につながらない。 なぜなら、彼らは「実戦」というものをまったく知らないからだ。 とするならば、菜々子とミスティは、その実戦を経験したことも、その心構えも、実戦向けの戦い方もあるということなのだが……。 「なあ、菜々子ちゃん……」 「本当なら、『本身を抜く』なんてこと、ずっとするつもりなかった」 大城の言いたいことを遮り、菜々子は早口でしゃべる。 「ここでは……遠野くん達がいるから、絶対にしないと思ってた。わたし自身の問題で身につけているものだし、バトルロンドでは使わないことにしてた。必要もなかった。 もしかしたら、もう『本身を抜く』なんて、忘れてもいい気さえしていたの。 ……でも、遠野くん達のために、自分にできることをすると、決めたから」 装備を片づけたアタッシュケースを閉める。 そして菜々子は大城に視線を移した。 「だから、わたしは全力を尽くす。本身だって抜くわ」 大城は菜々子の大きな瞳をみつめた。 真っ直ぐな視線。揺らがない。 誰かに似ている。 ああ、と大城は思い至る。 遠野だ。あいつの視線にそっくりだぜ、菜々子ちゃん。 大城は小さくため息をつきながら、頭を掻いた。 「まったく……惚れ直すぜ」 「それはダメ」 菜々子はいたずらっぽく笑い、人差し指を立てた。 「わたし、好きな人がいるから」 その笑顔を見て、大城はほっとする。 ようやくいつもの『エトランゼ』が戻ってきた。 次へ> トップページに戻る
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第2部 「ミッドナイトブルー」 第11話 「night-11」 2ヵ月後 西暦2041年 7月21日 15:00 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 お昼の3時のチャイムが公園内に響く。 園内の噴水広場の軽食コーナー、そこでは多種多様な神姫とオーナーたちがお菓子を食べて雑談をしていた。 オーナー1「おい、知ってるか?昨日の夕方、出たらしいぜ」 オーナー2「出たって何が?」 天使型「例の都市伝説ですね」 剣士型「超音速の死神か・・・」 悪魔型「ええーーーほ、本当?」 オーナー3「ついにこの神姫センターにも、来たか」 種型「なんでも物凄い数の神姫が撃破されたらしい」 花型「ひゃーーー恐ろしい恐ろしい」 オーナー5「超音速の死神、あれって実在するのか?よくあるゴーストファイターだろ?」 雑談に花を咲かせるオーナーたち。 軽食コーナーの端でパラソルの下で老人と将棋を打っている黒い軍服を着た将校型神姫がぼつりとつぶやく。 ナターリャ「やれやれ、またなんとかの死神か」 アオイ「死神といえば、あいつを思い出しますねーナターリャ将軍」 ナターリャの将棋を観戦するアオイとツクヨミ。 ナターリャ「そいつの話はするな」 ツクヨミ「ちょっとトラウマって奴ですか?」 茶化すツクヨミ。 軽食コーナーの横の桟橋では航空母艦型のツラギが停泊し甲板を開放し中央では武装をはずして水着姿になった神姫たちがホースを掴んでキャッキャと水浴びして遊んでいる。 ツラギ「あーーあーー、最近なんか張り合いのある奴がいなくてつまんないですねーマスター」 でっぷりと太った金川がカメラを片手に水着姿の神姫を写真に収めて満足している。 金川「いやいやーこういう可愛い神姫たちのキャッキャウフフを愛でるのもいいもんだよ」 ツラギ「なにも私の甲板の上でやらなくても・・・」 金川「オマエの上だったらいろいろと遊び道具とかあるし、便利だろ!艦内にはシャワーもあるし!!」 ツラギ「そういうのに、空母型使わないでくださいよー」 パチン ナターリャ「チェックメイト・・・じゃなかった王手!」 ナターリャが将棋を心地よく打つ。 ナターリャ「うむ!将棋も悪くないな!!面白い!」 ナターリャの対戦相手でありオーナーである伊藤は満足そうなナターリャを見て微笑む。 伊藤「それはよかったですね。ナターリャー」 湖に灰色の数十隻の戦艦型神姫が着水する。 野木「やあ、みんなお久しぶり」 ラフな半そでのTシャツを着た野木が軽食コーナーに顔を出す。 金川「おおー野木ちゃんお久しぶりー」 立花「ノギッチ!キター」 衛山「おひさ」 野木「ナターリャ将軍、おひさ」 ナターリャ「うむ」 ナターリャは手をひらひらと振る。 野木「調子はどうだい?」 ナターリャ「まあまあ、かな?最近はとんと暇している」 アオイ「張り合いのある神姫がいないんだとよ」 野木「まあ、SSS級の将軍に合うようないい娘はなかなかそういないからね」 湖に着水した数十体の戦艦型神姫の灰色の巨体がまぶしく光る。 ナターリャ「灰色艦隊は、すべて復活したようだな」 野木「まあな、マキシマがバラバラになっていて完全に治すのに1ヶ月以上かかった」 マキシマがやれやれと肩をすくめる。 マキシマ「今度、やるときは指揮系統をしっかりとしてくれよ」 ナターリャ「今度か・・・」 ナターリャは遠い目をして湖を見る。 ナターリャ「そういえば、夜帝はどうしている?」 野木「夜帝か、あいつは心斎橋の神姫センターでちょくちょく見かけているって話だ」 2ヶ月前に行われた夜帝との激戦はネットにも動画が公開され、多くの話題を呼んだ。 今まで夜帝の存在はあまり公には知られておらず、都市伝説化していたが二日間にわたる連戦で、夜帝がたった1機で戦艦型神姫を9隻、航空母艦型1隻、艦載機10数機という完全武装の2個艦隊を撃滅したことは多くの神姫たちを震撼させた。 夜帝はナターリャの手によって敗れたが、帰ってその名声を轟かせたことになる。 ナターリャ「そうか・・・またあいつとチェスを、いや・・・神姫バトルをやってみたいな」 ナターリャは感慨深くそういうとパチンと将棋を打つ。 アオイ「神姫バトルって将軍は、基本他人のふんどしで戦うだけでしょwwww」 ナターリャ「・・・」 青筋を立ててナターリャはパチンと指を鳴らす。 アオイ「ちょ」 湖に停泊中の灰色艦隊がアオイに向かって砲塔を向ける。 マキシマ「艦砲射撃ッ!!撃ち方ァーー用意!!」 ヴィクトリア「アオイさんはいつも一言余計なんですよ・・・・」 ナターリャ「これが私のバトルスタイルだ。文句があるならいつもで受け付けるが?」 野木「将軍には誰も勝てないな」 ナターリャ「SSS級でも用意したまえ」 サソリ型「あのお・・・・」 おずおずと一体のサソリ型神姫がナターリャに声をかける。 サソリ型「この間から夕方の5時に超音速の死神って二つ名のSSS級ランカー神姫がこの神姫センターに現れて暴れまくっているのです・・・た、助けてください!ナターリャ将軍!」 野木「はあ?超音速の死神ってあの超音速ステルス戦闘機型MMS「クリスティ」のことかい!?」 野木は目を丸くしてサソリ型の声に耳を傾ける。 サソリ型「はあ、なんでも心斎橋の神姫センターにいたらしんですが、夜帝とテリトリーがかぶるからってこっちに流れてきて・・・ううう・・・もうすでに300機くらいの神姫が、仲間がやられているんですよ・・・」 野木はナターリャに声をかける。 野木「将軍!出番だぜ」 アオイ「おいおい、超音速の死神って・・・確か音速を超える超高速戦闘型の化け物じゃねえか!!」 ツクヨミ「うは、また化け物神姫かよ」 ツクヨミとアオイが唸る。 ナターリャ「ほほう、化け物退治というわけか」 ナターリャはすっと立ち上がり桟橋に停泊している航空母艦型MMSのツラギに声をかける。 ナターリャ「ツラギ!張り合いのある奴が出たぞ!仕留めに行くぞ!!今度は超音速の死神だ!!」 ツラギがきょとんとした顔でナターリャの顔を見る。 ツラギ「ちょ、超音速の死神!!?クリスティじゃないですか!!SSS級の化け物ォ!!」 桟橋にいた灰色艦隊の戦艦型神姫もざわめき出す。 ノザッパ「ひえええええええ!!音よりも速いあのスピード狂ですか!?」 マキシマ「へへっへ、上等じゃねえか」 ヴィクトリア「化け物神姫ですね」 そのとき、神姫センターの上空を真っ黒な槍のようなスマートなフォルムの航空神姫が空を切り裂くように飛び去った。 □超音速ステルス戦闘機型MMS 「クリスティ」 SSSクラス 二つ名「超音速の死神」 姿が見えて、数秒後にショックウェーブが軽食コーナーに巻き起こり、日傘のパラソルが衝撃波で吹き飛び、音が後から付いてくる。 ドゴゴオオオーーーン!!! ナターリャはにやりと笑う。となりにいたサソリ型が悲鳴を上げる。 サソリ型「で、出たァ!!!」 ナターリャ「ふん、あれが超音速の死神か、なるほど化け物神姫め」 アオイ「ひええええ!!お、音が後から来たぞ!」 ツラギ「レーダーに反応無し!!ステルス機だ!!」 ノザッパ「は、速い!!」 ナターリャ「ふはっはっはは!!この間のバトルはまだ続いているぞ!!あのランカー神姫は夜帝のシュヴァルに心斎橋神姫センターを追い出されてここに流れ着いたランカーだ!!俺たちが招いた因果だッ!!!!!!盛大に歓迎してやろうではないか!」 ナターリャは右手を超音速の死神に向ける。 ナターリャ「バトルロンドは戦いの旋律 終わらない戦いの旋律 さあ、私たちも旋律を奏でようではないか・・・」 西暦2041年 その世界ではロボットが日常的に存在し、さまざまな場面で活躍していた。 神姫、それは全高15センチほどのフィギュアロボットである。 :心と感情:を持ち、最も人々の近くにいる存在。 その神姫に人々は、思い思いの武器、装甲を装備させて、戦わせた。 名誉のために強さの証明のために・・・・・・・・・ 名も無き数多くの武装神姫たちの戦い 戦って戦い尽くした先には何があるのか バトルロンドは戦いの旋律 終わらない戦いの旋律 戦いの歴史は繰り返す いにしえの戦士のように 鉄と硝煙にまみれた戦場で 伊達衣装に身を包んだ神の姫たちの戦いが始まる。 第2部 「ミッドナイトブルー」 終わり
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入手条件 性格 声優 機体解説 性能プラス補正アビリティ マイナス補正アビリティ ライドレシオMAX時の上昇能力 イベント EXカラー 専用レールアクション用GC装備所持者 入手条件 F3大会優勝後に届く挑戦メール「タケルからの挑戦状」を確認後、ゲームセンターに登場する 「タケル」に勝利するとアルトレーネと共にショップに追加される。試合内容は1on2のハンデ戦。 (上記挑戦者が出現し勝利していない場合はF2大会終了後、ゲームセンターから消える) 勝利していない場合、F2大会に優勝することでもショップに追加される。 性格 やや扱いづらい ボクっ子 自身の性能に自信を持つがゆえに、マスターには何かと不安を見せ色々と指南を繰り広げる 小生意気でちょっと世話焼きな神姫。 声優 水橋かおり 機体解説 名称:戦乙女型MMSアルトアイネス メーカー 素体:Dione Corporation 武装:Arms in Pocket 型番:DI/AIP-001X2 2038年に開催されたコンテスト「ぼくらの神姫」(一般から武装神姫のアイデアを募集、競うもの)受賞作を元に ディオーネコーポレーションとアームズ・イン・ポケット社が共同開発した「アルトレーネ」(DI/AIP-001X1)の姉妹機。 本機はスモールボディならではの敏捷さを利用したバトルスタイルが特徴で立体的な戦術を得意とする。 機体各所に配置された強化クリスタルアーマー内にはそれぞれ小型コンデンサを内蔵。副腕部、脚部などへ独立した パワー供給が可能となり大柄なアーマーにもかかわらず高い機動力を獲得している。また特徴的なスカートアーマーは 展開して格闘用武器、変形して高機動用ウイングへと転用できる多用途なユニットとなっており、優れた攻守のバランスを 実現している。加えて頭部にはアルトレーネとは別タイプのバイザーを装備、脆弱になりがちなフェイス部の防御力を高めている。 性能的には申し分ないが性格の面ではやや扱い難いところもあり、マスターを選ぶ神姫と言えるだろう。 性能 能力値 LP SP ATK DEF DEX SPD BST 適正 S C A B B B B プラス補正アビリティ 攻撃力+1,LP+1 マイナス補正アビリティ SP-1 ライドレシオMAX時の上昇能力 防御力,武器エネルギー回復速度,スピード イベント +ネタバレ 発生条件 イベント名 備考 初勝利後 ニヤニヤしてる? Love4:ゲーセン勝利後 フルオープン Love7:自宅 カノジョいないの? Love10:ゲーセン勝利後 気になるブログ Love11:ゲーセン勝利後 丁寧な返答 Love12:ゲーセン勝利後 初対面 Love15:ゲーセン勝利後 デートに誘え 「バトルに誘う」を選択した場合バトル有(ロッテンマイヤー 小山田愛佳)敗北でも進行するが、勝利すれば称号(禍福の証)入手 『デートに誘え』終了ゲーセン勝利後 ファーストデート Love18:ゲーセン勝利後 セカンドデート Love20:ゲーセン勝利後 最後のデート EXカラー A.蒼髪(デフォルト) +ネタバレ B.金髪 C.紫髪 専用レールアクション用GC装備所持者 植場怜太 陰陽熊
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先頭ページへ 装備構成解説 マイティ超高速巡航装備 軽量飛行装備 機動戦闘装備 シエンATパイロットスーツ装備 クエンティン瞬間移動装置活用装備 マイティ 超高速巡航装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ 胸部:FL012胸部アーマー 背部:リアウイングAAU7 エクステンドブースター×2 VLBNY1スラスター×2 ランディングギアAT3(補助スラスター付バージョン)×2 ポラーシュテルン・FATEシールド×2 VLNBY1増設ラジエーター VLBNY1携行小型タンク ぷちマスィーン・シロにゃん (GEモデルLC3レーザーライフル) 上腕部:VLNBY1腕部アーマー 下腕部:左/FL012ガードシールド、右/M4ライトセイバー 大腿部:VLNBY1脚部アーマー 脹脛部:VLNBY1収納ポケット 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: スティレット短距離空対空ミサイル×4 カッツバルゲル長距離空対空ミサイル×2 STR6ミニガン、もしくはアルヴォPDW9 登場時期:「強敵」~「固執」、「ねここの飼い方、そのじゅうさん、後半」 対アラエル戦、クエンティン遭遇戦の序盤など、初期によく用いられた構成。まだ煮詰まっていない段階の、雛形とも呼べる構成が対ルーシー戦でも登場している。 ありったけの推進装備をリアウイングAAU7に取り付け、推力を一方向に向けることで絶大な加速と最高速度をたたき出すことができる。推進器の取り付け方には変遷があり、後になるほどパワーロスが少なくなる(写真は初期の配置)。装備も射程の長いものを中心に取りまとめ、特に最終段階で片翼に懸架していたLC3レーザーライフルの長時間照射は前方の目標掃討に効果が高い。 本装備はアーンヴァルのもともと持っている高速飛行性能をさらに特化させることに成功しているが、同時に欠点も倍化させてしまっている。小回りはもちろん利かず、片腕にライトセイバーを付けているとはいえ近接戦闘は原則ご法度。さらに推進設備を全てリアウイングに集中させているために、推進器がどれか一つでも損傷してしまうとたちまち全体バランスの低下を招き、戦闘力が大きく削がれてしまう。バトルにおいてどんなに性能の高い神姫といえど、一発も被弾せずに戦う、などというのはほとんど無理な話なのである。 良くも悪くもピーキーに着地する結果となり、これ以上の発展を見込めないと判断したマイティとマスターは、飛行能力というアーンヴァルの特性を生かしたまま、より戦闘に適応する装備構成を模索してゆくことになる。 試行錯誤の末、現在以下の二つの構成が登場している。なお、すべての装備にほぼ例外なく取り付けられているぷちマスィーン・シロにゃんは、主に装備の制御や索敵などを担ってマイティの負担を軽減する、いわばフライトオフィサーである。 軽量飛行装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ(棘輪) 胸部:FL012胸部アーマー(争上衣、ぷちマスィーン・シロにゃん搭乗) 背部:白き翼 上腕部:VLBNY1収納ポケット(なし) 下腕部:M4ライトセイバー×2(FL012増設アーマー) 大腿部:ハグダンド・アーミーブレード(なし) 脛部:ランディングギアAT3(脚部機能停止のため排除) 武装: カロッテTMP (忍者刀・風花、ぷちマスィーン八体) ※( )内は「信念」における装備 登場時期:「固執」、「信念」、「ねここの飼い方、そのじゅうさん、後半」 もともと白き翼のテストのために考えられた構成で、翼の性能を最大限に生かすためかなりの軽装となっている。クエンティン遭遇戦においては「装備B」として、変更されたフィールドに対応するために登場した。また「信念」の対クエンティン戦においては、序盤はストラーフのリアユニット GAアーム、GAレッグを用いた陸戦特化装備であったが、戦闘中脚部機能が死んでしまったために脚部を丸ごと排除して本装備となった。その折もともとの素体装備は変更していないため、防御力重視の構成となっている。 軽快さを生かした格闘戦が得意であったが、性能的にどうしても中途半端にとどまってしまうくせがあり、メイン装備としてはほとんど使われていない。 機動戦闘装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ 胸部:ホーリィアーマージャケット 背部:レインディアアームドユニット・タイプγ(基部) ハイパーエレクトロマグネティックランチャー×2 バインダー(リアウイングAAU7) ハグダンド・アーミーブレード ぷちマスィーン・シロにゃん 下腕部:M4ライトセイバー×2 脛部:ランディングギアAT3 FL012ガードシールド 推進器付主翼(リアウイングAAU7) 武装: アルヴォLP4ハンドガン カロッテP12 スティレット短距離空対空ミサイル×4(サイドボード供給により発射可能総数は60発以上) 登場時期:神姫たちの舞う空編 アーンヴァルの飛行特性を維持したまま、戦闘適応性を上げるために考案された構成。メインの推進力が背部ではなく、脚部に移行されているのが大きな特長。ヨーロッパの軍隊によく見られるデルタ翼戦闘機のようなシルエットとなっている。 超高速巡航装備と比べて推進力は低下したものの、全体的にコンパクトにまとまっている。そして主翼が360度回転可能で、マグネティックランチャーとバインダーが四つのスタビライザーの役目を果たし、デルタ翼でありながら「低速域における機動性と安定性が低い」という欠点をカバーできている。結果、戦闘機にはできない奇想天外なマニューバーが可能になっている。 なによりも、ホーリィアーマージャケットの小型スラスターやマグネティックランチャーの電磁浮遊推進システムなど、脚部以外のボディ全体に推進器を配することによって、多少の損傷でも戦闘が続行できる優秀なダメージコントロール性能を獲得できたことがこの装備の功績として大きい。 未知数の部分がまだまだ多いが、本編における今後の活躍が大いに期待できる装備構成である。 シエン ATパイロットスーツ装備 頭部:頭甲・咆皇 胸部:VLBNY1胸部アーマー 上腕部:VLBNY1腕部アーマー 下腕部:VLBNY1リストガード 腰部:KT36D1ドッグテイル 大腿部:VLBNY1脚部アーマー 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: 十手 カロッテP12 モデルPHCハンドガン・ウズルイフ 登場時期:「バトリングクラブ」、神姫たちの舞う空編 非公式の「ボトムズin武装神姫バトル」において、クリムゾンヘッドに搭乗する際シエンがまとう装備。ヴァッフェシリーズのアーマーは衝撃吸収に長けながらかさばらないため、パイロットスーツとして最適であった。 緊急時の武装として十手や拳銃をコクピットに持ち込んでいる。 ちなみにクリムゾンヘッドの主武装はベルトリンク式に改造し装弾数を増やした咆莱一式である。 クエンティン 瞬間移動装置活用装備 頭部:フロストゥ・グフロートゥ 黒ぶちメガネ 胸部:胸甲・万武(ぷちマスィーン・壱号搭乗) 上腕部:フロストゥ・クレイン 下腕部:FL013スパイクアーマー01 腰部:VLBNY1腰部ベルト 大腿部:FL013スパイクアーマー02 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: サイズ・オブ・ザ・グリムリーパー ぷちマスィーン・肆号 ぷちマスィーン・オレにゃん 登場時期:「固執」、「信念」 瞬間移動装置とは厳密には装置ではなく、バーチャルバトルアクセスシステムの隙を利用した高速移動方法であり、あたかも瞬間移動しているように見えるためそう呼ばれる。また本装置によって空中移動も可能である。クエンティンのオーナーである理音が考案しセカンドバーチャルバトルにて使用していた。本装備はその瞬間移動を最大限活用するための構成である。 頭部、上腕部のフロストゥブレード、および下腕部、大腿部のスパイクアーマーは可動し、四肢とあわせて動かすことで限定的ではあるが瞬間移動後のアクロバット機動や体勢安定のためのバインダーとして働く。 主武装がサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと二体のぷちマスィーンだけというやや心もとない内容だが、これは瞬間移動装置の構成上サイドボードに神姫本体を入れねばならないため、武装の容量が限られてしまうためである(開始時の武装を入れるメインボードは空であるが、アクセスポッドには神姫が入れられていないため、武装を入れてもシステム側から「装備不能」と判断されエラーが発生する。そのためメインボードは使用できない)。ただ、瞬間移動のアドバンテージが非常に大きいため、この武装だけで十分という見方もある。 その後どこからともなく(おそらくネットから)瞬間移動の方法が解析され数多くの神姫がこの方法を使用したが、ゲームバランス崩壊の兆しが見えたためにオフィシャル側によってバーチャルバトル空間アクセスルールが改正され、実質使用禁止となってしまった。 そのためクエンティンの本装備はおそらくもう見ることは無い。 先頭ページへ
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{イリーガル・レプリカ迎撃指令…ルーナ編} ルーナの視点 「それじゃあ全員散開。敵は見つけ次第破壊で頼む。あ、でもちゃんと連絡する事。けっして無茶して闘おうとするんじゃないぞ」 「「「「はい!」」」」 「よし!散開!!」 ダーリンの声と同時にアタシ達、四人の神姫達はアンダーグラウンドの夜に飛び立つ。 満月がとても綺麗ですわ。 たまには一人になるのもいいですわね…あっそうでしたわ、アタシの右手には沙羅曼蛇を持っているから一人じゃないですわね。 一人の時は訓練と調整の毎日でした。 …でもあの時のアタシとは違う。 今のアタシにはダーリンが居てアンジェラスお姉様、クリナーレお姉様、パルカがいるのだから。 だから大丈夫。 気分治しにリアウイングAAU7を使い自由に飛び回る。 アタシが今飛んでる高度は100メートル、とても風が冷たいですわ。 でもこの前よりは寒くありませんわね。 それにすでに召喚した沙羅曼蛇も上機嫌みたいだし、今日は絶好調です。 そんな時。 <………。……> 「え、敵を見つけたって?地上から5メートル、数は二人ですか」 <……?> 「う~ん、ダーリンの話だと連絡しないといけない事になっていますけど…いいです、連絡はしないまま破壊しますわ」 <…?> 「大丈夫ですわ。私と沙羅曼蛇がいるのですもの」 <…!> 「言い答えね。それでは…行きますわよ!」 一気に物凄いスピードで急行下しながら低空飛行しているイリーガル・レプリカの二体を補足する。 型はジルダリアとジュビジーですか。 なら比較的に防御が弱いジルダリアを狙います! 沙羅曼蛇を構えジルダリアに! ズバッ! 「ッ!?!?」 一刀両断ですわ! ジルダリアは頭から身体ごと縦に真っ二つに裂け、断末魔を叫ぶ事も出来ないまま機能停止しました。 少し可哀想と思いますが、これもダーリンの為。 しかたない事です! 「お姉ちゃん!?お前ー!」 ジュビジーは怒り狂いながら私にグリーンカッターで攻撃してきました。 アタシというとソレを冷静に対処しながら、沙羅曼蛇で防ぎ体勢を立て直します。 ぎざぎざの葉を模した回転のこぎりのグリーンカッターが容赦なく沙羅曼蛇を刻む。 でもそれは無駄な事ですわ。 <…笑止> 「え!?グリーンカッターが!?!?」 グリーンカッターは沙羅曼蛇を刻むどころか、ボボボボと燃えていく。 それもそのはずですわ、だって、沙羅曼蛇は火炎灼剣なのですよ。 葉っぱを火に近づけたら燃えるに決まってるじゃないですか。 それにいくら葉を模したといえで、所詮植物系統。 炎に勝てる訳ないですわ。 ジュビジーはグリーンカッターを捨て後退しアタシとの間合いを取る。 まぁー妥当な考えだと思いますわね。 「あのジルダリアは貴女のお姉様だったのかしら?」 「そうよ!何でお姉ちゃんを殺したの!!」 「あら?殺したという表現は違いますわよ。破壊、ですわ」 「はか…い…」 このジュビジー、ちょっとオカシイですわね。 『死』という表現と定義をまるで人間と同じように言う。 「ち、違う!私達は破壊という扱いじゃない!!死ぬという扱いだわ!!!」 「違いますわ。アタシ達は武装神姫。人間の娯楽ために作られた精密機械人形」 「違う!あたしもお姉ちゃんも違うー!!」 リアパーツのキュベレーアフェクションを私に向け、突撃してきた。 キュベレーアフェクションの『収穫の季節』の攻撃をするつもりね。 <…!?主!> 「大丈夫…何もしなくていいの」 「私の必殺技っ!クラエー!!」 <主!> 「………」 ズガシャーーーー!!!! キュベレーアフェクションが一気にアタシを囲み鋭く尖った部分で挟み込む。 普通の神姫なら即穴だらけにされてしまう攻撃ですね。 …でも。 「…そ、そんな……!?」 「気は…済みましたか?」 アタシは健在していますわ。 本来なら例えVIS社製のこの素体のボディーでも重傷免れなかったでしょう…でも残念ながらそう簡単にやられる訳にはいけません。 そして何故穴だらけにならなかったというと、キュベレーアフェクションのニードルシールドがドロドロと溶けていくからです。 「どうして!?何で溶けていくの!?!?」 「それはダーリンが守ってくれたからです」 私は両手を胸元に優しく沿え瞼閉じる。 究極生命態システマイザー。 実はダーリンが私専用に作ってくれたらアーマーなのですわ。 ダーリンが真心を込めてアタシに作ってくれた、この究極生命態システマイザーは目に見えないけど、アタシを守ってくれるもの。 簡潔的に言うとこの究極生命態システマイザーはナノマシンの親戚みたいなものらしく、アタシの保護と回復と補佐をしてくれるシステム。 そのシステムはアタシの身体全体に張り巡らせているのです。 「どうして!?なんで攻撃が効かないの!他の神姫には効いたのに!!」 「今から破壊される貴女が知る必要はありませんわ」 「ヒィッ!?」 沙羅曼蛇を構え一撃で仕留める為に神経を集中させる。 このイリーガル・レプリカのジュビジーには悪いけど、破壊させてもらいます! <蛇眼!> 「ナッ!?動けな――――」 「…さようなら」 シュン! 一瞬にしてジュビジーの後方に居る私。 そして音も無くジュビジーは細切れのバラバラになりながら、暗いアンダーグラウンドの町に落ちっていった。 アタシは沙羅曼蛇を左手で摩りながら一人呟く。 「貴女の気持ち、今のアタシなら分かるわ。だって…昔のアタシは…ただの殺戮兵器でしたもの…」 昔の記憶はあんまり覚えてないけど、あの禍々しくおぞましい記憶は覚えてるわ…。 とても悲しい記憶だけど…。 お姉様…アタシは…。 「あぁー!こんな所に居た!!」 後ろから声がしたので振り返ると、そこに居たのはアンジェラスお姉様だった。 「も~、いったい何処まで探索しに行ってたのよー」 「あら、ここまでですわ♪」 「…そりゃあルーナはここに居るのだからここまでだけど…て、そうじゃなくて!」 「それよりも早くダーリンの所へ戻った方が宜しいじゃなくて?アタシを向かいに来たのはそいう意味も含めてでしょ?」 「アッ!そうだった!!さぁ早くご主人様の所に帰ろう!!!」 アンジェラスお姉様はアタシの左手を掴み引っ張る。 フフッ、アンジェラスお姉様はそそっかしいですね。 そんなにダーリンの所に早く帰りたいんだですか♪ 気持ちは良く分かりますわ。 嫉妬心も出てきちゃいますけど。 …あの頃。 あの頃のアンジェラスお姉様と比べたら…いえ、比べる必要ありませんわ。 アンジェラスお姉様はアンジェラスお姉様ですもの。 いつまでも皆と仲良く生きたいですわ。 そう、いつまでも…。 こうして今日というアタシの日にちは終り告げる。
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前へ 神姫とは。 ある世界においては、全稼働型の美少女アクションフィギュアのことである。 神姫とは。 またある世界においては超高性能AIを搭載した、主人に従う心と感情を持つフィギュアロボットのことである。 神姫とは。 古今東西あらゆる属性を取りそろえ、抜群の容姿と戦闘力を兼ね備える完璧超人(?)である。 神姫とは。 主人の好機に槍となり、なにより生活に潤いを与えてくれる存在である。 そして鷹峰家の神姫とは…… 『ハーヤーテー!!』 別に東京の朝空に響き渡ってはいないが、ハヤテは少女の声を聞き即座に自分のベッドから飛び起きた。 鷹峰ハヤテは十五歳。職業は高校生……予定。 予定というのは、今は中学校卒業後の高校への準備期間であり、まだ高校生ではないからである。 「……どうしたの、ナギ」 眠たげな眼をこすりながら、ナギの声のするほうを向く。 すると小さな二つの液晶画面に向かっていた少女が、不機嫌そうな顔でこっちを向いた。 『バトルハウスで100連勝できない!!』 彼は苦笑いをしながら、あぁ、と思った。 「朝からゲームですか」 『何度やっても60くらいで止まってしまうのだ。 ハヤテ、もうマルチバトルでもいいから助けてくれ』 「……そうだね、面白そう」 彼はそう言いながら部屋の扉に手をかけた。 「じゃあ、着替えて顔を洗ってくるよ。 そしたら僕も入ってあげる」 神姫とはいえ、少女のいる部屋で着替えるのは抵抗があったのである。 『……わかった、早く済ませろよ』 心の中で「はい、お嬢様」と言いつつ、ハヤテは廊下で着替えを済ませ、洗面台で顔を洗った。 「ただいま」 樫の木でできた扉を、極普通に開ける。 『遅い!「ハヤテ」なら全力疾走で来るところだぞ!』 「いや、階段もあるしそれはちょっと」 ハヤテは3DSを起動しながら言う。 「……それで、どんな作戦で行こうか」 『雨パでいいだろう』 「え? 僕晴れパなんだけど……」 『えー? そうなのか? じゃあ私に合わせろよ』 「えぇ? でも…… うーん……」 『あー、もういい、私はこれで行くぞ!』 「え、え? じゃあ僕もこれで……」 バトルの明暗を分ける2人のパーティの相談しないまま受付を済ませる2人。 だがそのパーティの中身は…… 「あれ、ナギ普通のパーティで行くの?」 『そういうお前も普通のじゃないか』 「それは、ナギに合わせようかと……」 『私もお前に…… おっと、始まってしまったな。 む、相手は初戦から強いのを繰り出してきたぞ……』 「大丈夫、たたみがえしがあるよ……ほらっ」 『おおっ!』 彼女を防御技で守って見せると、少女は感心の声を上げた。 彼女こそがハヤテの神姫であるナギ。ハヤテのごとく!のヒロインである三千院ナギをモデルとしたれっきとした武装神姫の一人である。 「主を守るのは、執事の務め、だよね」 『うむ、これで安心して積めたぞ!』 「よし、じゃあ攻撃だ!」 『うむ! ……当たった! 凄い! やったぞハヤテ!』 協力により、見事強力な相手を倒した二人はお互いに賞賛しあった。 『やっぱり、ゲームは二人でやると楽しいな』 「寝起きでマルチバトルするとは思わなかったけどね、ところで」 『ん?』 「このハヤテのごとく!のノベライズ版一巻プロローグ風のオープニングの流れはいつまで続くの?」 『そうだな、そろそろやめるか』 というわけで、普通の流れに戻ります。 第1話 「ナギのごとく!」 本日4月6日。 あれからもう十日が経とうとしていた。 もちろんあれとは、ナギが鷹峰家に来たあの日である。 「……はぁ、もう明日は学校かぁ……」 『学校?』 「言ってなかったっけ。 明日は高校の入学式なんだ。 だから、明日から学校」 『なんだ、お前ニートじゃなかったのか』 「……違うよ。 っていうか、生徒手帳見せたよね?」 休暇中ニートのような生活をしていたのは確かであるが。 ナギが鷹峰家に来たことも相まって、二人でゲーム三昧な毎日を送っていたのである。 「そうだ、ナギは僕が学校行ってる間どうするの? ……ナギも学校来る?」 『誰がそんなもの行くか。 家でゲームでもしているさ』 (そう来ると思ってた) 原作でも不登校気味で一日中家で漫画とゲームをしておりスーパーインドアライフを全力で満喫しているようなヒロインである。 (連れてけなんて言われたらどうしようかと思ってたけど、余計な心配だった) 「じゃあ、ナギは家で待機ね」 『……ハヤテもサボったらどうだ。 ゲームの続きをしようじゃないか』 「僕は初日から学校をサボれるほど、ナギみたいに神経が図太くないからね」 『む!あれは別にサボったわけではない! ただちょっとその……たどり着けなかったと言うか……なんて言うか……』 「でも登校中に海に行こうとしたり勝手にはぐれて時間を潰そうとしたり……」 ※ハヤテのごとく!4巻参照。 アニメではそのシーンは削られてました。 『うるさい!とにかく私は学校には行かんからな! 一人で一人用のゲームでも漁っているから安心して学校に行ってくるがいい!』 「あはは、はいはい。 さて……じゃあ」 時計を見ると、もう11時50分。 あと10分もすれば4月7日。入学式の日だ。 ちなみに学校が始まるのは8時40分である。 (通学の時間とか計算して……7時くらいに起きればいいかな。 やっぱり最低でも7時間は寝たいから、そろそろ…… でも、やっぱり初日から遅刻は嫌だし、もう少し早く?) 『ハヤテ?』 「とりあえず、アラームをセット……」 ハヤテはスマホを操作し、アラーム機能の画面を開く。 時間を6時にセットし、音量を最大に、ちゃんと設定されたのを確認し、携帯を閉じた。 「それと、明日持っていくものは…… 上履きと、筆記用具に、財布に、携帯電話(スマホ)に…… あと、ゲーム機も……」 復唱しながらバッグに詰めてゆく。 (こんなものかな) 確認を終え、ハヤテは歯を磨きに行くために立ち上がる。 「じゃあ、僕は歯を磨いて寝るよ。 ナギもクレイドルに戻ったら?」 『あぁ、そうだな。 ハヤテが寝るんじゃ仕方ない、私も寝るさ。 ……でも、電気を切るのは戻ってきてからだぞ、いいな』 「わかってるよ」 ナギは一人で眠れない、という部分も再現されているようで、 こういった細かい再現もファンであるハヤテとしては嬉しいところである。 「ただいま」 『おお、戻ってきたか』 そう言ってナギはクレイドルに座り込む。 『それじゃあ、もう寝るぞ』 「そうだね、それじゃあおやすみ、ナギ」 『うむ、おやすみ』 ハヤテはナギがスリープ状態になったのを確認し、そのままベッドに転がりこむ。 (学校か…… ……確かに二人で一日中ゲームしてたいって気持ちはナギと同じなんだけどな) ハヤテはそう思いながら、眠りについた。 次へ
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第五話 「ふぅ、どうにか侵入成功っと」 電脳空間の通路の一つにアカツキはレーザートーチで穴を空けるとそこから侵入した。 彼女の侵入した第一サーバーの保安隊は現在大量発生したワームプログラム-実は優一が陽動のために仕掛けた物だった-に対応すべく、最低限の戦力を残してほぼ全てが他のサーバーの応援に出向いていた。 「マスターの陽動も限界が有るから早いこと済ませないと」 今回、アカツキはフル装備状態で出撃していた。推進器系とライトセーバーはいつも通りだが、両手にはビームライフルを持ち、腰部後方にはサブマシンガンとハンドグレネードを装備している。シールドも念には念をと言うことで伸縮式を持ってきた。 通路の突き当たりに一体のアイゼン・ケンプがいる。どうやらそこにデータバンクがあるようだ。アカツキはビームライフルにサイレンサーを取り付けると狙いを定め、引き金を引いた。 パシュン。 周囲に聞こえるか否かの銃声が通路に響き渡る。粒子ビームはコアユニットを正確に貫き、アイゼン・ケンプは沈黙した。 その直後、優一から通信が入る 《もしもしアカツキ、俺だ。その扉は暗証番号を入れるタイプだな》 「開けるのにどれぐらいかかりますか?」 《3桁数字が十種類だから総当たりで一千通りで・・・、早くて45秒だな》 「最短でそれって、もっと掛かるかもしれないってことですか?」 《できる限り急ぐ。それまで持ちこたえてくれ》 「いたぞ、侵入者だ!!」 ワームの撃退を大体終わらせたらしく、戻ってきたアイゼン・ケンプの集団がアカツキに発砲してきた。彼女は寸前で身を翻して物陰に隠れるとその横を銃弾が通過し、扉に着弾した。 《しめたぞアカツキ、この方法なら10秒で開く。やり方は・・・ゴニョゴニョ・・・》 「危険すぎる気も・・・。わかりました」 そう言いながら左手のビームライフルでアカツキは反撃する。 ヘリオンも負けじとSTR-6ミニガンやリニアライフルを撃ち返してくる。 《アカツキ今だ!!》 「了解です!!」 ハンドグレネードだけでなく、プロペラントを扉の前に置き、相手の発砲に合わせてアカツキもビームライフルを撃つ。 するとグレネードによってプロペラントが誘爆し、通路に爆風が広がる。 それによってヘリオン隊は消滅し、扉も破壊される。 《成功だ、この騒ぎを聞きつけて他の連中もこっちに殺到すると思うから早くデータをこっちに》 「わかりました、すぐに作業に入ります」 アカツキはデータの転送作業に入り、その間に優一は広範囲での索敵に取り掛かる。 「マスター、作業を始めた時から気になっていましたが、何も来ませんね」 《確かに妙だな。防衛プログラムの一体や二体、来てもおかしくは無いんだが・・・、まあいいや。アカツキ、こっちの外付けハードに詰めるだけ詰め込んでくれ。うん?アカツキ、後ろだ!!》 「え?きゃあぁ!!」 不意に足下で爆発が起こる。何者かからの攻撃と悟ったアカツキは入り口の方に目をやるとそこに、一体の神姫が立っていた。 素体はツガルの物を使っているが、付けている武装は違った。 脚はツガルのデフォルト装備とは違い、ほっそりとしたシルエットを描いている。背中の2枚の翼はおそらくはフライトユニットだろうか、右手には銃身が流線型のライフルが握られている。 目はどことなく虚ろで口元には薄笑いが浮かんでいるようにアカツキの目には見えた。 《どうして、最新鋭のシュベールトタイプをカタロンが・・・?気を抜くなよアカツキ》 「了解です、マスターはバックアップを」 《神姫は良くてもマスターはダメダメみたいだなぁ、ソフィア後は適当にやっとけ》 「わかったよ、ご主人様」 ソフィアと呼ばれたその神姫はライフルの先から銃剣を繰り出すと、腕に対して垂直に持ち替えて突進してきた。 アカツキもライトセーバーを抜刀すると真正面から受け止め、鍔迫り合いとなる。 その状態でソフィアがアカツキに話しかけてきた。 「ハァイ、貴女が今回の獲物ね?しかもCSCなんてオモチャを載っけてるお嬢ちゃんなんて、無謀極まりないわね。CACを使っている私とどっちが強いかしら?」 「「ハードの強さが全てじゃない、戦術やコンディションで結果はいかようにもなる」ってマスターは言ってました!!」 「そんなの、勝てないヤツの言い訳にすぎないわよ。前置きはさておき、貴女もバラバラにしてあげるわ!!」 「くっ、なめるなぁ!!」 アカツキはライトセーバーで押し返すとソフィア目がけてビームライフルを撃つ。 しかし見切られていたらしく、身をひねってかわされ、逆にライフルで反撃される。磁力で加速した弾丸がシールドに着弾し、表面で爆発する。 「こいつめぇ!!」 今度は左手にサブマシンガンを持ち、ほんの僅かだけ時間差を開けて発砲する。 だが、これも左腕のディフェンスロッドでガードされる。 「どれくらいの腕か試させてもらったけど、興ざめね。壊れなさい」 ソフィアがいきなり急上昇すると、上空で回転して自らの全体重を銃剣に乗せてアカツキ目がけて急降下した。 アカツキは咄嗟にシールドを掲げて防ごうとするも、その勢いは止めきれなかった。 まずシールドの表面に亀裂が走ったと思うとメキメキと音を立てて割れ始め、それを貫いて銃剣の刃が左腕に到達し、さらに切っ先が胸部に大きな傷を付けていく。 「うぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「あ~ゾクゾクするぅ、この瞬間が一ッ番カ・イ・カ・ンなのよねぇ。さぁ、もっともっと私に声を聞かせてちょうだい」 倒れたアカツキにソフィアは容赦なくライフルを撃ってくる。 肩に、脇腹に、脚に、銃弾は全て命中しているが、どれも致命傷を避けられている。まるで昆虫の体のパーツを一つずつ胴から引きちぎって殺していくかの様に。 「ぐぅう、ぎゃぁぁぁ!!」 「はっはっはっはっは、何がMMSだ、何が武装神姫だ。所詮は人形じゃないか。欲望の受け皿になって、オーナーの都合ですぐに捨てられる、愛玩動物の方がよっぽど幸せだよ!!」 《こいつ、腐ってやがる・・・。離脱しろアカツキ、スモークを焚いてその隙に俺が空間に穴を開けるからそこから脱出するんだ!!》 「わかりました!」 そう言ってアカツキはバイザーの横に付けたスモークディスチャージャ ーから煙幕弾を発射する。 部屋全体に白い煙が広がり、それが晴れるころにはアカツキの姿は無かった。 《逃がしてしまうとは、使えない奴め。帰ったらお仕置きだ》 「ごめんねご主人様、役立たずで」 「大丈夫か!?しっかりしろアカツキ!!」 アカツキの回収を確認すると優一はすぐさま彼女をメンテナンス用のクレードルに移す。 「あ・・・、マスター・・・私・・・」 多少なりとも回復したのか、アカツキは目を開けた。かなり憔悴しているらしく、その目には陰りがあった。 「安心しろ、任務は成功だ。それとアネゴにはしばらく依頼を持ってこないよう言っておく。リベンジをしたい気持ちもわかるが、相手は軍用神姫だ。今はゆっくり休め」 「はい、ありがとうございます」 その日の夜中、クレードルの上でアカツキは静かに泣いていた。 「うぅ、勝てなかった・・・。マスターの・・・力になれ・・・なかった」 シュベールトの装備を身に纏ったツガルタイプの神姫・ソフィア、CACを搭載していたとは言え、ツガルそのものは比較的古いタイプだ。それなのに最新鋭のアーンヴァル・トランシェ2の自分が負けた、それが悔しかったのだ。 アカツキの目に再び涙が溢れてくる。彼女が泣き疲れて眠りに就いた時には丑三つ時をすでにまわっていた。 第六話へ とっぷへ
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第一話:仮装姫 俺の学生としての朝は早い。授業がだいたい、一限目からあるのもそうだが、蒼貴、紫貴のメンテもしなければならないからだ。不本意ではあるが、杉原からそれに関する知識を学んで、それから日課にしている。工業大学所属の俺としては精密機械をいじれるのは授業の助けになっており、非常にプラスに働いている。二人を整備できて成績アップになるのだから苦にはならない。 蒼貴と紫貴とああだこうだ雑談しながらそれを終えたら、大学に行くべく、スマートフォンやら財布やらの常備品や道具を詰めた通学用のカバンを持って、二人に見送られながら部屋を出る。ここからは大学生 尾上辰巳として活動するのだ。 家の外へと出たら、大学へと向かう。通学には電車を使っている。その気になれば時間はかかるものの、自転車でも通えるのだが、電車の方が帰りの飲み会などの時に都合がいいからだ。 「今週の週刊バトルロンドを見たか?」 「ああ。また双姫主の尊がランカーをぶっ倒したらしいぜ? これだけの事をやっていて何で素性を隠すんだろうな?」 「さぁ……? 闇バトルをぶっ潰したこともあるとか、バーグラーに結構、因縁つけられているとか黒い噂もあるからじゃね?」 「ほんと、すげぇよな。憧れるぜ……」 大学へ行くための電車の中で何やら中二病でも患ってそうな残念な二人組が俺の噂をしている。誠に申し訳ないが、実際には学生生活でそれがバレると人間関係上、非常に好ましくない事になるからだし、ランカーとかバーグラーに関しては倒す必要のあったり、止むを得なかったりする相手がたまたまそうだっただけだ。十中八九、お前らのヒーロー像を台無しにするだろう。 内心、軽い謝罪やら、憧れの否定やらが混ぜこぜになった気持ちでそいつらをスルーして大学のある駅を降りる。駅を降りて、徒歩十分の所に俺の大学がある。少しは名の知れた工業大学で中堅に位置するまぁまぁな大学だ。ちなみに男性八割、女性二割のむさ苦しい環境にある。工業大学にはよくある事である。 そうそう、『尾上辰巳』と『尊』の時は髪型のセットを変えたり、伊達眼鏡の有無でかなりの差をつけている。俺を知るヤツでもない限りはバレる事はない。 十分間、通学路を歩いていく。今回も例によって気づかれる事なく、通り過ぎることができた。 「尾上~。授業行こうぜ~」 振り向くとチャラ男のテンプレの様なファッションの男がいた。 樺符 守。それが彼の名前だ。高校時代からの友人で大学でもよく同じ授業を取るため、大学に行くと高い確率で会える奴だ。 「ああ。確か、今日の一限は埴場先生の心理学だったな」 「メンドくせぇんだよな。あの先生の神姫の心理とかの話はよ。神姫なんてキモいだけじゃん。オタクの最新アイテムってだけだしさ」 「そう言うな。授業に出れば単位はもらえる」 「ははっ。それもそうだ。今日も寝てそうだぜ」 この様に神姫はオタクのフィギュアと同列と認識している。神姫には心はあるが、彼の場合は実際の女性と遊ぶことの方が遥かに楽しいし、神姫など所詮はロボットだし、フィギュアの延長線としか思っていない。それが真っ当だと思っているのである。 勘違いしないでほしいが、俺は神姫マスターになっても彼を嫌ってはいない。普段の守は根は優しいし、面倒見はいい。サッカー部ではエースストライカーを任されるほど、しっかり努力をしている。普通の人間としては恰好を除けば極めてまともなのだ。そして、彼の神姫への認識は別に大衆的な観点から言えば、間違っていないのだ。 神姫は確かにオタクが多くもっており、アレな衣装を着せて好き勝手やっている様は野郎がお人形遊びしている様にしか見えないという偏見は少なからずある。そもそも俺もその一人だったのは蒼貴と出会ったばかりの時の通りだ。 彼女と出会う前は工業大学で剣道をしながら、守を初めとする友人達と遊ぶ神姫とは無縁の生活をしていたのである。 「そういや最近、お前は忙しいのか? いや、誘っても頻繁には来なくなったからよ」 「バイトが忙しくなったのと、友達が増えてスケジュールが埋まるからだな。お前も結構、増えたんじゃないか? もう俺達も大学二年の後半だ」 「確かにそうだな。すまねぇな」 「気にするな。プライベートは人それぞれさ」 蒼貴と会ってからは、こうして嘘もついている。大学生活と神姫生活の二重生活のためにな。 後は守と適当な雑談をしながら、教室へと入って席に付く。周りを見てみると神姫たちが見え隠れしているのがわかった。 デブがマリーセレス型と戯れていたり、生きていられるのかと不安になるほどガリガリでビン底の様な度の凄そうな眼鏡をかけた奴は他の人達に目もくれずにラプティアス型とボソボソと話をしていた。 「うっへぇ。相も変わらずってもんだなぁ……」 彼らは極端な例だが、こうした光景を見ると守が気味悪がるのもわからないでもない。こういう光景が珍しくないのが現状の神姫のイメージと思われても仕方のない事のなのかもしれない。城ヶ崎玲子や藤堂亮輔の様な金持ち美人や若い妻帯者が神姫をやっているというのが少しでも見られれば少しは守のイメージは変わるかもしれないが、この場でそういった類の事は……あまり期待できない。 何も返事をすることのできない俺はその言葉を無視して、筆箱やら、ノートを自分の前に出して準備をする。 「お前は本当に真面目だよな。この授業ってテストあるけど、受けていなくても取れるって先輩の話だろ?」 「だからといってやらないのもな。ものは考えようで楽しめるさ」 呆れ半分、感心半分な口調で俺のその行動を守は授業の事を言ってきた。その返事は表側はそう答えたが、本当は埴場先生の神姫を交えた心理学の授業はなかなか興味の持てる内容であり、蒼貴と紫貴に出会って以降、後期の授業で取ろうと決めていたのだ。 「変わってるなぁ。まぁ、いいや。俺は寝るぜ……」 「また、夜遅くまで起きていたのか。よくやるなぁ」 「大学の奴とSkipeでダベっていたら結構な時間になってな……」 「そうか。まぁ、ゆっくり休んどけ」 「おう……」 適当に納得した守はSkipeで寝なかった時間分を補うためにすぐに机に突っ伏して眠りに入った。俺は彼をそっとしておく事として、授業の開始するまでスマートフォンを使った情報収集をする。イリーガルマインド関連の噂、有名なオーナーの噂と色々と調べ物をする。 十分後、教壇に埴場玲太先生が自分の神姫であるクラリスと呼んでいるアルトアイネスと一緒に立った。 「やあ。こんにちは。これから授業を始めるよ。最近、イリーガルマインドの偽物が出回っているらしいから気を付けてね。そういう違法パーツに惹かれる心理というのはだね……」 「教授。必要な事は伝えたんだから授業」 「そうだね。では始めよう」 埴場先生は心理学的な興味から神姫を始めた人で、そこからはまり過ぎてFバトルと呼ばれるライドオンシステム形式のバトルロンドの大会において、F0クラスで上位ランカーになったことがある程の実力を持つほどになったらしい。 ただ、××××という青年がF0にやって来ると、彼は二十位からあっさり先生のランクまでたどり着き、すぐに先生を超えて、一位をかっさらってしまったとの事だ。 ××××は違法DLアプリ事件と謎の連続爆発事件を解決し、長きに渡り、F1チャンピオンだった竹姫葉月をも超えたトップランカーだ。最強の名を欲しいままにする彼はいったいどうしているかはその事件以降はわからない。だが、「お人よし」だの「どんな神姫も認めるマスター」だの様々な言葉で多くの人に認められている彼の事だ。決して迷うことなく、正しいと思う道を行くだろう。 「……この様に相手の都合の悪い秘密を知ってしまうと、ギャップが生じてしまうんだ。簡単に言えばイメージが崩れたとか、こんなのは彼なんかじゃないとかそんな感じだね。あいどるなんかの知らない一面を見たときなんかにそれを感じたことはないかな? 他の人の神姫なんかでもいいかもしれないね」 今回は秘密、隠し事による気持ちの変化の授業であるらしい。皮肉にもそれは俺は大きく該当することになる。もし、守に自分が神姫を持っていることがバレれば、神姫を、そのマスターのイメージを嫌悪している彼はイメージとは違う俺を見て、拒否するかもしれない。 そうなれば、これまでの友情が壊れてしまうだろう。それどころか、噂が広まって大学での自分を見る目を皆は変えてしまうかもしれない。だからこそ、俺は神姫を持っていることを隠し通している。これまでの自分の繋がりを失わないために、な。 全く、何が『双姫主の尊』か。あるのは対戦で勝った事実だけで、大衆のイメージには無力だ。 「それを利用して悪さをする人もいる。脅迫ってヤツだね。そういうのは一度、応じてしまうとそうした人達はもっともっととやるのは映画なんかでもよくあるシチュエーションだ。チョコレートをあげたら今度はケーキをって具合にね」 問題はこういう所だ。必要に応じて選択していく必要があるだろう。当然、金銭やら物品を要求してくるならほっとくか、状況に応じてこちらもバラせない状況を作る。単純なバラす事だけをしたいというなら何かしらの勝負をして黙らせるだけで十分だろう。 もっとも、そういう事が無い様にわざわざ変装をしているのだからそんな状況に陥らないのが一番なのだが。 「さて、これで授業を終わりにしよう。来週は先週言った中間レポート提出があるから忘れないように頼むよ」 クラリスにたしなめられながらの埴場先生の授業が進むと、チャイムが鳴った。そうするとキリの良い所で埴場先生は授業を終わらせ、来週の連絡事項を伝えると教室から出て行く。 「ん……。辰巳、授業は?」 それと同時に周りの人達が雑談を始め、その多くの声で守が目を覚ました。 「もう終わった。来週はレポートらしいから忘れるなよ」 「先週の連絡のか……。わかった……。あ~、ねみぃ……」 「……俺は次の授業に行く。お前も遅刻しない様にな」 「結構、遠いとこの教室だったな。お互い、頑張ろうぜ」 「ああ。またな」 簡単に連絡事項を伝えると、お互い違う授業であるため、俺は守と別れて次の授業へと急ぐことにした。 次の授業はC言語のプログラミングだった。その辺りは蒼貴や紫貴のシステムチェックで覚えた知識が活かせるのでさほど、苦戦する授業ではなかった。 俺は授業以上の事はしなかったが、その手の変態の物となると神姫のオリジナルスキルプログラムを作ったり、他のロボットプログラムを作ったりと多種多様な専門的な話が行き交っていた。 武装神姫を初めとするロボット分野のシステムの幅の広さには内心、驚くものがある。オタクがなんだろうが、こうしてとんでもない技術をもっているのなら、問題はないはずなのだが、彼らは趣味がアレな方向に突っ走っている。そのため、他の人からはちょっと変な目で見られがちだ。バカと天才は紙一重とでもいうのだろうか。 授業が終わると昼休みに入る。俺は食堂で食事を取っていると、神姫関連の噂が飛び交っているのを耳にすることができた。それは狂乱の聖女やイリーガルマインドという実際にあった事例のある噂から、『異邦人(エトランゼ)』や『大魔法少女』といった通り名持ちの有名なオーナーの話まで非常に種類が豊富だ。 神姫オーナーになってみると毎日の様に聞ける訳の分からない単語も理解できるようになってきている。それだけ自分も武装神姫を知ることができているという事か。 食事が終わった後は後半の制作実習を神姫のメンテ技術を活かしてこなす。かなり基礎的なものであり、いつものメンテに比べれば楽な授業だった。 最後は部活だ。剣道部に所属をしていて、子供の頃から祖父の教育で様々な武術を習わされた経験の積み重ねから二年で指導する立場にあった。 「身体全体を使え。身を固くせず、柔らかく、円を描くようにだ」 俺は指導をしながら、後輩の連続攻撃を避ける、いなすと攻撃を見切った上での防御をしてみせる。 「そしてそれを闇雲にやるんじゃない。必中の気持ちでやれ」 後輩の攻撃は直線的であり、あまりフェイントもしてこないため、読みやすい。これでは勝てる試合も勝てない。 「わ、わかりました!」 今度は俺の隙を見計らうつもりか、闇雲に攻撃してこなくなった。いい傾向だ。 しばらく、狙いを定めるかの様に俺をにらみつけた後、面を仕掛けてきた。いい攻撃ではあるが……。 「胴! ……っと」 大振りのそれを素早い胴で切り抜け、一本を取ってみせる。一歩遅れて後輩の面も放たれたが、既に俺のいない場所の空を裂くだけだった。 「良い攻撃だったが、大振りだ。もう少し素振りをして、無駄なく触れるようにするといいだろう」 「はい!」 後輩のアドバイスをすると、彼は自分からそれを実践し始めた。これでこの後輩への指導のキリはいいと考え、別の後輩を捕まえるべく動こうとすると何やら二、三人が固まって議論しているのをみつけた。 「それにしても尾上先輩が神姫に指導をしたらどうなるかなぁ?」 「何かその神姫は化け物になりそうだよね。先輩、教え方上手いし、戦略ゲームを携帯ゲーム機でやってるのを見たことがあったけど、簡単にクリアしてたし」 「戦い方も超厳しいお爺ちゃんから、子供の頃から様々な武術を叩き込まれてて、わかっちゃってるからなぁ。マスターのスペックがそのまま、神姫に反映されたらすさまじいだろうさ」 「ああ。だから、この部活に多く来ているわけじゃないのに、あんなにすごく強いんだなぁ」 半ば本気、半ば冗談で俺が神姫に技を教えたらどうなるかが議題ならしい。 実際に持ったまでは現実になっているが、化け物にはなっているとは到底思えんのだがね。それに神姫で必要なのはパートナーとなる神姫との連携だ。それを幾千幾万通りと考えられる発想力があれば、特に武術やら才能やらがなくても、努力次第で違ってくるはずだ。どっかの雑誌じゃ、努力と友情と勝利という三つのキーワードを掲げているが、割とそんなものなのではないだろうか。 「おい。何話してんだ? 今は稽古中だぞ?」 「あっ!? すいません!!」 「先輩って神姫は知ってますか?」 「……周りで聞く程度にはな」 「それに先輩が戦い方を教えたらすごくなるんじゃないかって話していたんです。先輩、神姫をやってみませんか?」 「すまんが……時間がないから難しいだろうな。それより、稽古だ。ここで話をしている暇があるなら練習するぞ」 せっかくの誘いだが、俺は隠し、断る。それを了承することはない。尊の時もそうだ。こいつらでは尊が俺だと察してしまう。心苦しくはあるが、隠し通すしかなかった。 話題を稽古に無理やり切り替え、後輩達の指導をつづける事、一時間前後。剣道部の稽古が終わり、俺は帰路に付いた。 今日は一旦、家に帰って、蒼貴と紫貴を連れて、真那のバトルロンドの練習に付き合う事になっていた。少々早めに帰る必要があるだろう。あいつは遅れると色々とうるさい。 「ねぇ」 そんな中だった。駅に着く前に突然、肩を叩いて呼び止められる。その声の方を向くと女性がいた。彼女は……確か、弓道の竹櫛鉄子さんだった。 「何だ?」 「君が双姫主の尊君?」 「尊? 誰だか知らんが、人違いだ」 ポーカーフェイスな返事とは裏腹に竹櫛さんの言葉に俺は内心、驚愕した。変装をどうやって見破ったというのだろうか。 「そうなん? 君、『あのイベント』におったでしょ?」 「いや、いなかった」 「ああ、まどろっこしい奴だな。鉄子ちゃんよぉ。写メ見せてやんなよ」 突然、カバンからキツネ耳が特徴的な確か……レラカムイ型の神姫が出てきた。そいつは確か、コタマと遠野のイベントでは呼ばれていたのを聞いたことがある。 そして、彼女に促され、鉄子が携帯の画像を俺に見せてきた。 ……そこには俺がVRマシンで対戦をしている様子が写されていた。 動かぬ証拠だった。確かにこれだけしっかり撮れていれば、こうして偶然見つけたらわかってしまうだろう。ここまでの物を撮られているとは予想していなかった。いや、気づかれないと高をくくっていた自分の油断だったのかもしれない。 いずれにせよ。これ以上は言い逃れはできそうになかった。 「……場所を変えようか」 これ以上の正体バレを防ぐため、俺は彼女を別の場所……通学路から大きく外れた喫茶店へと誘う事にした。 それに対してコタマは少々不服そうだったが、二人は了承し、俺に付いて来てくれた。現状はこれでこの二人だけが知っていることになると考えられる。その後はこいつらとどう話を付けるかだ。 これは……面倒なことになった。 トップへ 次へ
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「先輩!イルカがこっちを向きましたよ」 「おー、かわいいなぁ。しってたか?イルカは睡眠をとるときに脳を半分ずつ寝かせているんだ」 「そうなんですか?理系としては興味深いですね」 「そのあたりは俺はサッパリだけどな・・・」 「・・・・・あ、次のショーが始まりますよ」 気まずくなって話題をそらす由佳里、その心遣いが優一には痛かった。 電車で小一時間ほどの距離にある水族館、その一角の一番広いスペースを占める大型プールで行われている、イルカのショーを二人は見物していた。 すると突然、イルカの一頭が大ジャンプして着水、大量の水飛沫が二人に降りかかる。 「のわっ!?」 「きゃぁ!!」 「はっちゃー、ビショ濡れだな。大丈夫か?」 「どうにか・・・」 優一は暗い色の服装のためか頭が濡れた以外目立った被害は無いが、由佳里の方は白いブラウス越しに下着が透けてしまっていた。 「・・・・とりあえずこれ、羽織っとくといいよ」 「はい・・・」 そう言って彼は紅くなりながら自分の半袖ジャケットを由佳里に手渡した。 -- 「フンガー!!!」 「お姉様落ち着いてください!」 「駄目だコリャ」 反対側の座席の一角、優一らが座っているちょうど反対側に八雲達がいた。 「だって、今もの凄く良い雰囲気だったでしょう!?」 「だから落ち着いてくださいって!」 怒りやら嫉妬やら負の感情で、アカツキは完全に我を失っていた。 「とにかく、見つかったら面倒だから、二人とも静かにしてくれよ・・・」 「『女の嫉妬は地獄の業火』、って言うでしょ。諦めなさいな」 頭を抱える八雲に追い打ちをかけるミコト。シラヌイは彼の気持ちが何となく判る気がした。 お天道様が南のど真ん中を通過する頃、イルカショーを見終えた二人は外のベンチで休憩を取っていた。 「えっと・・・・・・由佳里、今何時だ?腹減っちまった・・・」 「丁度十二時半ですね。実はお弁当、作って来たんですよ。先輩もどうですか?」 そう言うと由佳里は自分のバッグからゆうに五人分は有りそうな重箱を取り出したが、空腹感が既にピーク(優一の体はトコトン燃費が悪い)に達していた優一からしてみれば好都合だった。 「いよっしゃ。戴くとするかな」 「あhfhrkfじゃいおええかm!!」 「だから!いい加減にしてください!!」 一方、100メートルほど離れた植え込みの影では段々と手に負えなくなってきたアカツキをシラヌイが必死に止めようとしていた。 「手作り弁当とは・・・・やるな・・・・」 「同感」 「まさか、まさかまさかまさか、『君も食べちゃいたいよ』みたいな展開に・・・」 「「なるわけあるか!!」」 二人に気づかれない最大限の音量で突っ込むミコトとシラヌイ。いつもの敬語は何処へやら・・・。 「はふぁー」 ため息をつく八雲、辟易するのも無理は無いだろう。元来彼は他人の行動や言動を疑うことがない。よく言えば正直者、悪く言えば早とちり仕勝ちな人物だからだ。 「兎に角、二人とも後で黒崎に謝っとけよ」 気を取り直して八雲はアカツキとシラヌイに忠告すると、シラヌイは沈黙を持って了解としたが、アカツキから拒否の言葉が飛び出した。 「・・・・・・・・」 「嫌です!」 「へっ?」 「だって、私たちに相談せずに勝手に由佳里さんと出かけちゃったんですよ!後を付けない理由はありません!」 『私があの時シラを切っていればこんな事には・・・!』 内心、「しまった」と思うシラヌイ。自分の所為で優一に怪我をさせてしまったことに。 「兎にも角にも、ランチが済んだら・・・。否!今すぐにでも突撃です!!」 「あ、ちょっと!お姉様!!」 時既に遅し。どこにしまっていたのか、完全武装でアカツキは二人の元へ突貫していた。 「うん?ってえぇえ!?アカツキ!?なんでここに!?」 「マスタァアア!!覚悟ーーーー!!!」 「待て!!話せば判る!!」 「問答無用!!話す必要はありません!!!」 まるで何時ぞやに起きたクーデターを彷彿とさせるやり取りを交わしながら、数分ほど、一人と一体の一方的なドッグファイトが続いた。 ドッグファイトが終わって、悠一は肩で息をしながらアカツキ達に説明していた。 「ぜぇはっ、ぜぇはっ。だから、由佳里に誘われたって、言ってンだろ・・・!」 「だからと言って、隠し事をしていたことには変わらないじゃないですか!」 「あの・・・ごめんなさい、アカツキちゃん。私が、先輩を誘わなければ・・・・」 「そんな!由佳里さんが謝る事じゃ・・・。それに、悪いのはそれに鼻を伸ばして乗っかったマスターの方ですよ」 「だから、黙っていたのは悪かったって言ってるだろうが・・・」 「まあ、その位で良いんじゃないかな?彼にも事情が有ったって事で」 優一は内心「有り難い」と思ってしまった。八雲が間に入らなければ、延々と続いたであろう循環を止めてくれたことに。 「それはともかくとしておいて、久しぶりだな御名上。三年ぶりか?」 「ああ、二日前イギリスからね。本物のタワーブリッジはデカかった・・・」 「ミコトも連れているってことは・・・」 「そう!向こうでも、いや向こうだけでなく世界中で武装神姫は大人気さ!良い修行になったよ。・・・・・ヨーロッパチャンピオンには返り討ちにされたけど・・・」 「あれは別格だろ・・・。ともかく、今度一戦どうだ?留学に出るときは全然だったお前の腕前、どの程度か見たくなった」 「良いねぇ、それ。じゃあ、都合が付いたらすぐにでも連絡するよ」 「あいよ、またな。さてと、俺らも帰るとするかな?」 「マスター、まだ話は終わっていませんよ?」 「そ、そうだったな。はは・・・ははははは」 その後、優一が家路につくのは日も暮れかける時刻だったそうな。 その日の夜、優一達が寝静まった頃合いを見計らって、一つの影がムックリと起き上がると窓を開け、夜空へと飛び立って行った・・・。 第壱拾七話へ続く とっぷに戻る
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前を見た少女と、煌めく神の姫達(その二) 第四節:真心 楽しかった夕餉も終わり、私達は電車で次の場所へと向かった。そこは、 冬のお台場である。バレンタインには相当早い為か、夜と言ってもさほど カップルの数は多くない。私達の邪魔をされないという意味では、上等! 「とりあえず、観覧車にでも乗るか?街の夜景を見るのも、いいだろう」 「はいっ!あたし達も、こんな所に来るのは初めてですから緊張します」 「……多分それは、マイスターも同じなんだよ?だって頬が、紅いから」 「マイスターも来た事無かったの?大丈夫かしら……でも付いていくわ」 「折角のデートですから、デートコースはマイスターにお任せですの♪」 民放キー局が遠くないこの場所にあるのは、湾岸地区の夜景を楽しむには 最適と、午前中に買い求めた雑誌の記事で書かれていた大観覧車である。 なるほど……目の前にしてみれば、小さな私の躯にはかなり大きい。更に 躯の小さな神姫達ともなれば、天を突く程の巨大な風車なのかもしれん。 「……ふむ、どうだ。これに乗って、今から暫く皆に話をしたいのだが」 「う、うん。良いわよ……アタシには何がどうとか、まだ分からないし」 「きっと東京の夜景が、煌めく無数の宝石みたいに映るはずですの~♪」 「楽しみ、かな。さぁ、マイスター……行こう?邪魔のされない領域に」 「どんな時間が過ごせるのか、楽しみですね……ええと、大人一枚です」 訝しむ受付嬢に“大人一枚”と復唱して、私達はゴンドラへと乗り込む。 デートスポットに一人で来る、こんな外見の私を不審に思うのも当然か。 だが無闇にそれを怒るよりも、今は大切な“妹”達との時間を尊重する! 「ほう……これが、東京の夜景か。どうだ皆、自分達が住まう街の灯は」 「うん、綺麗!凄く綺麗よ……世界がこんなに輝いてるのに、アタシっ」 「それ以上は言いっこ無し。エルナちゃんも、この光景を楽しむんだよ」 「そうですよ。ほらアレ見て下さい!東京タワーですよ、東京タワー!」 「夜空の星はちょっと見辛くても、夜の灯火はまた綺麗ですの~……♪」 その自制が奏功し、皆は輝く夜の街並みに釘付けとなっている。無論私も 東京の美しさを再認識して、荒み気味の“心”が満たされるのを感じる。 陳腐とは思うが、こういう些細な事さえも……今なら大事に思えたのだ。 そして最上部へ差し掛かった辺りで、私は話を切り出してみる事とした。 「……さてと、まずは今日の修理で何をしたか。それを告げねばならん」 「修理、ですか?あたし達は全身のモーターと、電装機器が不調で……」 「とても立ってられなくて、セーフティが起動したんだよ。大丈夫かな」 「有無。それらの交換・修理は無論だが、CSCへの負荷が大きかった」 正直、今告げて良いかは悩んでいた。だが、この後にもっと重大な告白を せねばならん以上は、この程度なら『大事の前の小事』と言えるだろう。 私は、少し不安げに見つめる四人を膝に乗せて“治療”の内容を告げる。 「そこで損耗が軽微な“プロト・クリスタル”の情報を利用したそうだ」 「利用?それって、データの補強に別のCSCを用いたって事ですの?」 「そうだ。現行型CSCの論理ダメージは、そうして修復したらしいぞ」 そして物理的な傷は、Dr.CTaが持つマイクロマシン用の技術で回復した。 その辺をどうやって直したのかは、私には分からぬが……恐らく彼女なら 後顧の憂いがない程度に“傷”を修復してくれた、そう私は信じている。 「そしてエルナ。お前の“CSC”も、同様の方法で修復したと聞いた」 「えッ!?ちょっと、CSCって……アタシにそんなのが入ってたの?」 「有無。当然、現行型CSCではない。もう一つの“プロトタイプ”だ」 「じゃあ……これでエルナちゃんは、正真正銘“神姫”になれたのかな」 「更に言えば、本当の意味であたし達の“妹”にもなりましたね……♪」 それはロッテのCSCが正式に認可される程度に、CSCと酷似した珠。 神姫の試作品が源流ならば、それも必然だったのだろうが……エルナに、 “心”が宿るのを拒む者が居なかったのは、これで確かとなったのだッ! 「やっぱりエルナちゃんは、愛されてましたの。そしてこれからもっ♪」 「う、うん……アタシにも“心”……“真心”が、宿ったのかしら?」 「無論だろう。四人とも、各々の“真心”を得て蘇ったのだ。大丈夫!」 恐らく同じ修理法は何度も使えぬだろう。それだけの“離れ業”なのだ。 だが、Dr.CTaがそうして皆を蘇らせた事は……私達にとって特別な意味を 持つだろう。“魂”が神姫にあるならば、その繋がりがより強固な物へと 進化したという事が、言えるのだからな。私にとっても、誇らしい事だ! 「そっか……じゃあ、アタシもお姉ちゃん達の大切な“妹”になれる?」 「勿論ですの!エルナちゃんは、これからもずっと大切な存在ですの♪」 「ボクらも……アルマお姉ちゃんも、ロッテお姉ちゃんも……なのかな」 「それは、マイスターの“告白”を聞けば分かると思いますよ……うん」 「そうだな。では今こそ、言おうではないか……っと!?ちょっと待て」 そして“様態”の説明が一区切り付いた所で、皆の視線は私へと集まる。 そう、いよいよ告げねばならぬ時が来た……と思ったのだが、見ると外の 風景は、輝く夜景から元居たビルの谷間へと戻ってきていた。そう、今は 観覧車の中……一周してしまえば、降りなければならない。迂闊だった。 「う、うぅむ……時間が来てしまった。場所を変えて、そこで話そうか」 「それがいいですの。ちょっといい雰囲気だったのに、残念ですの……」 「ぅぅ……じゃあ何処に往きますか?あたしは何処でも大丈夫ですけど」 「やっぱり、ロマンチックな場所がいいと思うんだよ。大事な事だから」 「アタシは……胸が熱くなる感じがしてたから、助かるわ。少し怖い位」 ──────私も怖いけど、だけど……とても胸が暖かいよ。 第五節:約束 場所の選定ミスによって、告げるタイミングを逃した私達。だが、ここで 諦めるつもりはない。という訳で、観覧車を後にした私達は海浜公園へと やってきた。潮騒の音が、優しく夜闇を揺らす……そんな静かな場所だ。 だが、どうも仕切直しとなった空気は重苦しい。何から話せばいい……? 「……ところでさ、マイスター。なんでアタシの名は“エルナ”なの?」 「む。いきなりだな、エルナや……そうか、名前の由来が知りたいのか」 「そうみたいなんだよ。ボクは、お店の名前からもらったんだけど……」 「あたしもですね。“ALChemist”から一文字もらってます……あっ!」 そんな雰囲気を撃ち払ったのは、エルナだった。そう、“妹”の名前には しっかりと意味がある。店名から、ドイツ人女性の名を導き出したのだ。 “Alma”と“Lotte”、そして“Clara”に“Erna”。不思議か?だがッ! 「そう。エルナの“r”と“n”は、“m”を分解して捻り出した物だ」 「つまり“錬金術師”の名を冠する大切な神姫、って事になりますの♪」 「アタシも、同じ存在なのね……じゃあ残りの字は、どうするのかしら」 私の考えを聞いて、エルナは嬉しそうに……しかし、少しだけ不安そうに 私を見つめる。彼女の純粋な問いに対する答えは、私の胸にある。それは 少し照れくさい言葉となるが、“告白”の切っ掛けとしては上等だろう。 「まず、“ist”は“Christiane”……クリスティアーネから取った物」 「……なら残りの“h”はどうしますの?それが、気になりますの……」 「そうだな。“Herz”……ドイツ語で、“心”や心臓を意味する単語だ」 『え……?』 そうだ。皆の中心には“心”が……私の“心”がある。今から告げるのは それを確固たる物とする為の、誓いの儀式だ。言葉は、選ばねばならん。 「エルナ。新しく私達の“妹”となる、気高き紫の姫君よ」 「な、何?……マイスター、何でもいいわ。話して……」 「お前を解き放った以上は、終生まで側にいてもらうぞ?」 「これ……首飾り?お姉ちゃん達と、お揃いの……?」 私は、答えを待たずポケットから一つのペンダントを取り出して、彼女に 付けてやった。そう、私の……歩姉さんのペンダントを元に作り上げた、 五人お揃いのペンダント。これがエルナに与える、“約束の翼”である。 何れは此処に神姫バトルの階級章を嵌め込む。そうして完成する逸品だ! 「……クララや、静かなる翠の姫君よ」 「何、かな?マイスター……」 「智恵と、秘められた優しさ。これからも大事にしてほしい」 「……大事に?……それは……」 クララは答えを紡ぎ出そうと俯き何かを思うが、私は更に皆へと告げる。 四人もいるのだ、一々区切るよりは一遍に告げてしまった方が楽だろう? 「アルマよ。陽の如き、明るき紅の姫君」 「は、はいっ!?」 「お前の暖かさと“姉”としての矜持は、皆を支えていくだろうな」 「ぁ……支えるだけじゃ、ダメなんです……その……」 アルマは反論しようとしたが、そこで一端言葉を句切った。そのまま私は 残った一人へと、そして皆へと想いを告げる事とする。血が沸騰しそうな 感覚を堪えて、私は言葉を絞り出す。最早、隠す事は出来ないのだから。 「……そしてロッテ、澄み切った蒼の姫君よ」 「はいですの♪」 「お前は、純粋な“心”で私の……皆の力となった」 「……そう言ってもらえると、光栄ですのっ」 「そして、皆……今だけは、私の『本当の言葉』を伝えたい」 『はい……』 それは、遠い昔に棄ててきた私の“弱さ”。しかし、完全に捨て去る上で 彼女らに、それを伝えないといけなかった……ううん、伝えないとダメ。 私の弱い所も強い所も、全部……何もかも皆に見せないといけないから。 「コホン……皆、とても大切。『好き』とか『愛してる』だけじゃない」 「ま、マイスター……?」 「もっともっと純粋な『大切にしたい』って想いが、私にはあるんだよ」 「……マイスター、その口調……」 「でも、それを一言にしちゃうなら……やっぱりこうなっちゃうかな?」 「ずっと前、お店を立ち上げるより前の……弱かった頃の言葉ですの」 「だから、私は言うよ。アルマ、ロッテ。クララ、エルナ……四人とも」 「う、うん……何?」 そう……これは私が弱さを棄てる前に、歩お姉ちゃんと話していた言葉。 今この時は、この言葉で語りたい……だって、止められない想いだもの。 それはたった一言。陳腐でも、飾らなくてもいい。偽れない大切な言葉。 「“大好き”だよ……皆」 『あ……!?』 その言葉と共に、私は皆の小さな……とても小さな唇と、優しく触れる。 堅い殻の躯だけど、それでも“心”はとても甘く切なくて……暖かいの。 だけど、それを認識したから……私はやっぱり、素直になれないのだな。 「……は、はは。今更生き様は換えられぬが、雰囲気もあるしな?」 「マイスター……」 「だから今だけは、あの言葉で想いを……な、何だクララや?」 そう言い、照れながらも調子を戻した私の掌に乗るのは、クララだった。 彼女は、心なしか潤んだ様に映る“琥珀色の瞳”で、私を見つめている。 「異形を抱えて消えかかったボクを救ってくれたのは、貴女なんだよ」 「……う、うむ。そうだったな」 「その時から、ボクの“心”にはずっと貴女がいたもん」 「クララ……?」 「だから、ボクも言うよ……掛け替えのない大切な人に“大好き”って」 「んむ……ん、ぷは。クララ……むぐぅ!?」 そして私の唇に押しつけ返される、クララの小さな唇。そっと抱きしめる 私の手中で、彼女は身を退き……アルマへと、身を譲った。彼女もまた、 私の唇を奪い……そして、泣きそうな儚い笑顔を浮かべつつ言ったのだ。 「ん、ん……あ、アルマっ?」 「支えるだけじゃダメです。あたしも、皆を愛して……愛されたいから」 「アルマ、お前……」 「だって貴女の“心”が、あたしを暖かくしてくれたから……だから」 「……有り難うな、本当に」 「いいんです、一生お返しするんですから。“大好き”な人に……ね?」 涙が零れる。だが、皆の思いが籠もった“琥珀色の瞳”を見逃すまいと、 私はずっと皆を抱きしめながら、その想いに応えていくのだ。次に、私の 前に現れたのはエルナ。彼女は、頬を真っ赤に染めながら上目で告げた。 「……正直ね?まだ、何もかも信じ切れたわけじゃないの」 「エルナ……それは、そうだろうな」 「だけど、貴女達なら……お姉ちゃん達と貴女なら、信じてみたいわ」 「……そうか」 「“命”と“心”を掛けて救ってくれた皆を、“大好き”って言いたい」 「──────ッ!」 「それが、アタシの“真心”。素直じゃないけど、赦してね?……んっ」 「ん、む……んぅぅ!?」 エルナの告白と共に、私の唇は三度……そして四度塞がれる。最後に私へ “純潔”を捧げたのは……他ならぬロッテだった。彼女は、とても明るく 私に微笑みかけて、そして紅潮する顔をそっと抱きしめてきたのだ……。 「人と神姫では、歩いていける時間が違いますの。永遠は無理です」 「ロ、ッテ……?」 「だけど、全ての時間を“大好き”な人と共に使いたいですの♪」 「あ……ロッテ、皆……ッ!!」 「だって、本当に“大好き”なんですから……貴女の事が」 「……ぐす、みんなぁ……ッ」 「だから万一人間の恋人さんが出来たって、問題ないですの~♪」 「ッ……ばかぁ、っ!」 ロッテの“告白”を受けて、四人が私を見上げる。堪らなく、愛おしい。 私は優しく抱きしめた。小さな殻の躯に詰まっているのは“空”ではなく 純粋で穢れのない“心”。その眩しさで、また私の視界は潤んでしまう。 私は、ずっと……愛しい“妹”達を抱きしめて、歓喜の涙を流していた。 彼女らも、その想いは同じだろう……それがまた嬉しくて、微笑むのだ。 「ぐす……私の“弱さ”を見せたのはお前達だけだ、そして……だなっ」 「今後“弱さ”を見せる事は多分無いだろう……って言いたいのかな?」 「それでも大丈夫ですよ。今の……マイスターの“心”は、皆の中に!」 「ちゃんと刻まれたわ……大丈夫、忘れない。貴女の全てと共に歩むの」 「だから、もう一回だけ。皆で“告白”しますの♪いっせーのーせっ!」 『マイスター……“大好き”ですッ!!!!』 ──────私も、“大好き”だよ……。 ──武装神姫……小さな戦乙女。人と機械の垣根を越えて、そんな君達に 出会えた喜びは、ずっと朽ち果てない宝物だよ……小さな私の“妹”達。 皆で、ずっと一緒に歩んでいこうね。それが、皆の“願い”だから──。 妄想神姫:本編 / Fin. メインメニューへ戻る